栗田です。1か月ぶりの投稿になってしまいました。
実は12月の頭にも別の机上講習会に参加してきたのですが、その話はまた別の機会に。
12月14、15日に国立オリンピック記念青少年総合センターで行われた、「令和元年度安全登山サテライトセミナー」に単独で参加して来ました。 私自身サテライトセミナーに参加するのは初めてだったのですが、もっと部員を連れて行くべきだったと後悔しています。(そもそも申込期限を間違えて覚えていた私が悪いのですが)私たち登山者に有益な情報をたくさん得ることが出来たからです。
少し話が横道に逸れてしまいますが、ここ1か月ほどで、ワンダーフォーゲル活動をしていくうえで外部の組織、人と関わりを持つことの重要性を痛感しています。
もちろん1つの「部」という集団として、先輩から後輩へと、代々登山の技術や面白さを伝え、共有していくことは大切なことですし、長い間受け継がれてきたものというのはかけがえのない財産です。(今の電通大ワンゲル部はそれも出来ていないのですが)
しかしそういったある種の「伝統」は2面性を持っていて、時に人を盲目にさせてしまうと考えています。特に私たちのように自然という潜在的リスクのあるフィールドで活動する人間にとって、それは文字通りの致命傷になり得ます。
ですから後輩たちには是非、講習会に参加することで情報の更新を必ず行って欲しいと思います。本や雑誌から学習することも重要ですが、実際に生身の人間から話を聞くという行為は何物にも代えがたい価値があると思います。 単に知識やデータを得るだけにとどまらず、その人が普段山岳にどのように関わっているのか、どんな思いで壇上に立っているか、といった背景を同時に知ることが出来るのです。
話し手を知り、同じ時間と空間を共有することによって知識が立体的に見えてくるはずです。少し大げさですかね。でもそれくらい講習会に足を運んで欲しいです。
さて、今回のセミナーの中で私が特に印象的だった話を紹介しようと思います。水曜日の臨時部会でも話したのですが、準備しないで話し始めてしまったため、あまり部員には伝わってないような気がします。このブログを書こうと思ったのはその為でもあります。
紹介したいのは山岳ガイドの長岡健一さんの講義の一部です。「もしものときに役に立つセルフレスキュー」という講義でした。 長岡さん曰く、「登山は文化」である、と。また日本でも登山が文化として根付いて欲しい、ということを仰っていました。
少し語弊があるかも知れませんが一言でいうと「互いに助け合おう」ということです。自分が遭難したときは救助を呼ぶのに他人の遭難に出くわした時には「私は何も出来ません」というのは虫が良すぎますよね。 講義の中にもありましたが、「登山者」と「登山客」の違いはまさにこの「相互扶助」の考え方を持っているか否かであるのです。
もちろん大学の部活として登山をやっている以上、部員は「登山者」であるべきだと思います。 でもそれは何もプロの救助隊と同じ水準で助け合え、と言っているのではないのです。これはとても重要な点です。つまり、自分にできることをしよう、ということです。
「登山客」の多くは救助に対するハードルが高すぎるのだそうです。山中から一人で傷病者を背負って下山口まで運ぶことを想像してしまうのです。それは理想かもしれませんが、果たしてそれほどの体力を備えて山に入る人がどれほどいるのでしょうか。少なくともそのような疑問が出てくる時点でその救助は「文化」とは言えないでしょう。
それでは、多くの登山者に浸透し得る「文化」としての救助とはどのようなものなのでしょうか。その例として長岡さんはトレッキングポールを使った松葉杖の作り方とザックを使った担架の作り方と搬送法を教えて下さったというわけです。(これを部会で共有しました)
しかし何より大切なのは救助に対するハードルを下げること、そしてその時の自分に出来ることをすればいいという考えを持つこと。具体的には「100m運ぶ方法」を実行すること。そしてそのための学習と練習をすることです。 100m運べればそれを10回繰り返せば1km進めるのです。その1kmで救助の時間が短くなれば重症化を防ぐことに繋がる可能性は大いに期待できます。そしてそれは傷病者の社会復帰を早めることに繋がるのです。
長岡さんはこの考え方が多くの登山者に広まることを願っているのです。その為に壇上に立っていたのだと思います。私ももちろん同じ考えです。部員全員がこの考え方を持ち、山を楽しんで欲しいと思います。
以上です。他の5つの講義の内容は、部員の皆には別の形で共有したいと思います。自分の仕事を自分で増やしている気がしますが、それをする価値はあるでしょう。
近いうちにまたブログを更新しようと思います。(頑張ります) それでは。
栗田